手足
手と足(Hand and Feet) 1
無指趾症 Adactyly#
定義体肢のすべての指趾における,すべての指趾節骨および,それと関連する軟部組織の欠損(図 1)。
コメントこの記述子(discriptor)では,中手骨または中足骨の欠損を伴う必要はない。どの体肢が無指趾症に影響を及ぼしているか特定するために,的確な表現が付記される。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Aphalangy
屈指症 Camptodactyly#
定義指の DIPJ かつ/または PIPJ を,能動的または受動的に伸ばしても,180°まで伸展できない状態(主観的)(図 2)。
コメント第 5 指 PIP 関節が伸展困難な場合,この用語の使用を制限すべきとする意見がある。この場合,われわれは使用を制限しない。患者が握りしめた手(clenched hand)を有す場合は,この用語を使うべきではない。同様のことが,骨端の肥厚を伴う末節骨を含む橈骨角(radial angu-lation)によって生ずることがあるが,この所見は Kirner 変形や dystelephalangy[Ozonoff, 1992]とよばれる。罹患した指趾を明記すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Streblodactyly
彎指趾症 Clinodactyly#
定義手掌平面上で,側方に彎曲している指趾(主観的)(図 3)。
コメントこの用語の彎曲は,指趾節骨に限定され, MCPJ/MTPJ の偏位(deviation)には適用されない(Radial deviation of the fingers参照)。典型例では異常形態を示す中節骨を認めるが,絶対的なものではない。どの指趾で起きたことか,また偏位している方向性について明記すべきである。この所見は第 5 指でよくみられ,ほとんどすべて橈骨側へ偏位しているが,どの指,どの方向へも起こりうる。同様のことが,骨端の肥厚を伴う末節骨を含む橈骨角(radial angulation)によって生ずることがあるが,この所見は Kirner 変形や dystelephalangy[Ozonoff, 1992]とよばれる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Incurved finger
太鼓ばち指 Clubbing#
定義爪の長軸方向および側方向への屈曲増大と関連する,すべての方向へ向けた,指尖部の軟部組織の拡大(軟部組織の浮腫による腫脹とは異なる)(主観的)(図 4)。
コメント種々の理由により,この定義では爪甲角に関する詳記は用いられない。 1 つ目の理由として,どの角度を測定すべきかという点で合意が得られていない。 2 つ目に,角度に関する基準値として確立されたデータが知られていない。 3 つ目に,臨床医はまれにしかそのような計測を行わない,などの理由による。太鼓ばち指は,しばしばドラムスティックの端様と形容される。罹患指趾を明記すべきである。もし,サブタイプの識別子(identifier)が明記されないのであれば,すべての指趾を含むものと想定される。肥大した軟部組織は,部分的あるいは全体的に太鼓ばち指の構成要素であるが,骨棘や適度な末節骨の過成長と関連しているかもしれない。太鼓ばち指の臨床的な評価と関連性がない(X 線写真評価ではない)ため,このことは,用語の定義として明記されていない。
隆起した指腹 Digit Pad, Prominent#
定義指尖または趾尖の腹側局面の軟部組織の隆起(主観的)(図 5)。
コメント指趾の隆起の程度は,生涯を通じてさまざまであるが,新生児期により目立ち,水分貯留に依存する。この用語は太鼓ばち指には用いるべきではない。同義語の“fetal fingertip pads”では,その個体において,胎児期以来必ずしも指尖腹側が隆起していたことを意味するわけではないので注意する。“Persistent fetal pads”という用語は,判明しているようでしていない,自然歴に関する情報を含むので容認できない。
同義語Fetal finger/toe tip pads
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Persistent fetal pads
絞扼輪 Digital Constriction Ring#
定義指趾の周囲が著明に減少している狭い分節(主観的)(図 6)。
コメント罹患した手と指,および指趾節骨と関連し隣接するバンドの位置を明記すべきである。もし,それが指趾の全周囲を含まないならば,部分的に記述すればよい。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Amniotic bands
欠指症 Finger, Absent#
定義手指のすべての指趾節骨および関連する軟部組織の欠損(客観的)(図 7)。
コメントこの用語では中手骨の欠損を必要としない。罹患した指趾を明記すべきである。この定義では Partial absence of fingerは除外される。もし,失われている指が真ん中の指であれば,失われた指に番号付けすることはチャレンジである。このような場合,「母指ではない」などの記述を付記し,補足する必要がある。その一方,母指があるのかないのか明らかにするのは容易であろう。また,重度の骨性・皮膚性合指を伴う 2 つの指趾と欠指症(absent finger)を区別するのは難しいかもしれない。もし患児がある体肢のすべての指趾を欠損していれば,Adactylyという用語を用いるべきである。乏指症(oligodactyly)という用語は,同義語として用いてもよいが,失われた指趾が特定されないときだけ用いる。たとえば,ある患者における第 5 指の乏指症を記述するのは悩ましいというのも,乏指症は存在する指に対し用いる用語で,F5 は失われている指に使われているからである。もし,特定できない指が欠損しているならば,たとえば“欠指症, 2 本”というように,はっきりした数字を用いて記述するとよい。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypodactyly
幅の広い指 Finger, Broad#
定義母指以外の手の指の幅が増大していること(主観的)(図 8)。
コメント周囲長が増大する幅広い指(broad thumb)では,長さも増大する Macrodactylyと区別しなければならない。その違いは軽微かもしれない。増大した幅が末節骨に限定する場合,この用語を使用すべきではなく, Broad fingertipsを用いるべきである。罹患した指趾を,本稿の「イントロダクション」の番号付けの方法にならって明記すべきである。この用語は,第 1 指には用いられない(Broad thumbs参照)。母指および 1 つ以上の指が罹患している場合, “Broad thumb”と“Broad fingers,F2-5”と区別して記載するかわりに, “Broad fingers,F1-5”と明記するほうが簡便であろう。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Pachydactyly;Thick fingers
皮膚性合指症 Fingers, Cutaneous Syndactyly of#
定義2 つの指の前後軸において,末端側に向かって少なくとも PIPJ レベルまで,連続して伸展する軟部組織(客観的)(図 9)。 または 2 つの指の間に存在し,前後軸において連続する軟部組織。隣接する指の中手指節関節(metacarpophalangeal joint)にまたがる屈曲線が,有意に末端方向へ伸びている状態(主観的)。
コメントわれわれは主観的な所見と客観的な所見を区別するため,独断的ではあるものの,ほぼ間違いない閾値を定めている。重度の皮膚性合指症では,客観的判定が容易だが,より軽微なものでは,主観的となり難しい。この 2 つの状況を区別するため閾値を設定した。指あるいはその一部が,P/D 軸上のある一点において,通常,指間に存在しない軟部組織により合わさっている。もし,皮膚性合指が指の爪床の末端まで伸展していれば,“完全(complete)”という修飾語句を付加するとよい。罹患した指を明記すべきである。無制限に使われる syndactyly という用語は,これが骨性なのか皮膚性なのか不明瞭なので,もはや使用しないほうがよい。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語“Long hand”という用語は,2 つの異なる用語, Syndactyly(without adjective);ZygodactylyLong fingersと Long palmの意味を併せもつ定
長い指 Finger, Long#
定義中指の長さが,在胎 27~41 週の新生児平均値の 2 SD 以上あること,または,出生後から 16 歳までの小児の 97 パーセンタイル以上で,しかも 5 本の指が互いの指に対して正常な長さの比率を保っていること(たとえば中指だけが唯一長い指である場合,該当しない)(主観的)(図 10)。または,手の手掌に対して不釣り合いに長くみえる指(主観的)。
コメント最初の定義は問題があると思われる。なぜなら,この定義は,中指以外の指がすべて同様に長いことを意味している。ほかの 4 つの指との長さの均整は,明らかに主観的に決まるものであり,主観的な用語とみなさなければならない。Arachnodactyly という用語は,細くて長い指という意味で用いられてきたが,しばしば,細い,あるいは,長いというだけで使われることがある。 義なので,用いられるべきではない。もし,四肢の指趾のサブセットだけが長いのであれば,罹患した指趾を明記すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Arachnodactyly
折り重なり指 Finger, Overlapping#
定義安静時に,隣接する指の背側表面に乗っている指(客観的)(図 11)。
コメントこの記述子は,どの指が含まれるかにしたがって,順序づけられる(たとえば図の説明文を参照)。罹患している指を明記すべきである。数の序列は,どの指が背側にあるかを明記する,すなわち,一番上にある指に面している手の背側を最初に記述し,折り重なる指はコンマを用いて記載する。側方に偏位するものの,隣接する指の上に載っていない指は,Clinodactylyとして記述すべきである。
指の部分欠損 Finger, Partial Absence of#
コメント欠損している部分を明記するとよい。“遠位の”という修飾語句は,末節骨の喪失を表すものであり,臨床的には爪の欠損で特徴づけられる。“近位の”という修飾語句は,基節または中節骨の喪失を表わし,爪がまだ存在し,かつ/または末節骨のような指節骨の残存を X 線写真上認めることをさす。どの指節骨が欠損しているかを X 線写真撮影なしに決めることは難しく,撮影した場合でも,失われた骨を正確に同定することは難しいかもしれない(中節骨と末節骨の欠損を区別しようとする必要はない)。この所見は Short fingersとは異なる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypophalangy
指の橈側偏位 Finger, Radial Deviation of#
定義四肢の軸前方向(橈骨側)に向かう指の偏位(主観的)(図 13)。
コメント偏位は MCPJ で起こる。罹患した指を明記すべきである。この所見は Clinodactylyとは異なる。
短指症 Finger, Short#
定義中指の長さが,在胎 27~41 週の新生児平均値の 2 SD 以下あること,または,出生後から 16 歳までの小児の 3 パーセンタイル以上で,しかも 5 本の指が互いの指に対して正常な長さの比率を保っていること(たとえば,中指だけが短指症である場合は該当しない)(主観的)(図 14)。または,手に比べて不釣合いに短く見える指(主観的)。
コメントこれはよく知られたバンドリング用語である。多くの人体計測値における定義は,ほかのすべての指が中指同様,相対的に短い,ということを前提にしている。ほかの 4 本の指との均整を決めることは,明らかに主観的な判断なので,これは主観的な用語とみなさなければならない。短指症に関する Bell の分類(Temtamy と McKu-sick らによる総括[1959])は,手のパターンを複合的に評価したものである。 “Brachydactyly”という言葉の使用法は,ここで使われている用法とは別ものである。“Brachydactyly X 型”が使われているときは,Bell の分類を引用したものである。Brachydactyly of the handが用いられているときは,記載された指の長さが短いことに言及しているだけである。 “Short hand”は Shot fin-gersと Short palmのバンドリング定義であり,用いられるべきではない。もし,末節骨が不釣合いに短いと判定された場合,付加用語(additional term)である Short distal phalanges of the fin-gersを使うべきではない。指が全体的に短く末節骨も全体として不釣合いに短い場合,そのときは両方の用語を用いるべきである。
同義語Brachydactyly of the hand
指の末節骨短小 Finger, Short Distal Phalanx of#
定義指の末端から遠位指節皮線または DIPJ(中節骨と末節骨の間にある関節)の屈曲点までの距離が短いこと(主観的)(図 15)。
コメントこの用語は,指節骨が失われてなければならない Partial absence of the fingerとは異なる。一方,この用語では指が小さくとも存在していればよい。遠位指節長は,指の残りの部分や患者の他の正常な指,または年齢や体格を同じくする典型罹患者と比較することで,主観的に判断される。屈曲皺のない個体に対する,主観的な定義に関しては,DIPJ を屈曲させ,指の末端からの長さを評価し,決定すればよい。もう一つの別の方法として,関節を触診すればわかるかもしれない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Short terminal phalanges;Short terminal finger
細長い指 Finger, Slender#
定義手足や個体の体格に比べて不釣合いに狭い(周囲長が短い)指趾(主観的)(図 16)。
コメント罹患した指趾を明記すべきである。この所見に対する評価は,指が長いと難しい。軽蔑的な意味を含む用語“arachnodactyly”は,Long fingerや Slender fingerなど別個の記述子で書き換えられる。
同義語Narrow digits;Narrow fingers
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Thin digits;Arachnodactyly
小さな指 Finger, Small#
定義反対側の指と比較して,あるいは,年齢を適合させた個体に対する典型的な指のサイズと比較して,長さや周囲長が有意に減少している指
コメントこれは, Short fingerや Slender digitを包含するバンドリング用語であるが,あまりにも広範に用いられるので掲載されている。この用語は,正常な指節数を有すときに限り使用できる。第1指のみに異常を認める場合は,もう一つ別の適切な用語, Small thumbを用いる。第1指とその他ひとつ以上の指に異常を認める場合,“Small thumb”と“Small fingers F2-5”と分けて表記するより, “Small fingers F1-5”と表記したほうがより簡便かもしれない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Underdeveloped finger;Hypoplastic finger
先細り指 Finger, Tapered#
定義近位から遠位へと周囲長が徐々に減少している指(主観的)(図 19)。
コメント一様に指が罹患してなければ,罹患した指を明記すべきである。罹患した指が明記されていないのであれば,手のすべての指が先細り指である。
指の尺側偏位 Finger, Ulnar Deviation of#
定義四肢の後方あるいは軸後方向(尺側)へ向かう指の屈曲(主観的)(図 20)。
コメント偏位は MCPJ で起こる。罹患した指を明記すべきである。この所見は Clinodactylyとは別個のものである。
幅広い指突 Fingertip, Broad#
定義幅が増大した指の末端部分(主観的)(図 21)。
コメントこの用語は,遠位部が明らかに中間部よりも幅広いときに用いるための表記法である。もし Clubbingや Macrodactylyを認めたり,指全体が幅広いのであれば,代わりに Finger broadを用いる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Spatulate fingertips
手と足(Hand and Feet) 2
母趾欠損 Hallux, Absent#
定義母趾の指節とその軟部組織の両方にみられる欠損(客観的)(図 33)。
コメントこれは,中足骨の欠損を伴わない。定義では,部分的な母趾欠損を除外している。 Oli-godactyly や hypodactyly は,軸前性指趾(thumb や great toe)の喪失と第 2-5 指趾の喪失との違いを考慮して,もっと特異的な用語で置き換え表記される。母趾と 1 つ以上のその他の足趾が欠損するとき, Absent halluxと Absent toes,T2-3に分けて表記するのではなく, Absent toes,T1-3と記載するほうが簡便である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypodactyly;Oligodactyly
幅広い母趾 Hallux, Broad#
定義腹側や背側への肥大がなく,幅が見た目にも増大している母趾(主観的)(図 34)。
コメント幅広い母趾では周囲長の増大を認めるかもしれないが, Macrodactylyと区別しなければならない。なぜなら, Macrodactylyは長さも増大しているからである。短い母趾の場合,この評価は難しいかもしれない。Broad toesとは別個の定義であることに注意する。母趾と 1 つ以上の他の足趾が罹患している場合, Broad halluxと Broad toes,T2-5と分けて表記する代わりに, Broad toes,T1-5と記載するほうが簡便である。
ハンマー状趾 Hammertoe#
定義MTPJ の過伸展に PIPJ の過屈曲を伴ったもの(主観的)(図 35)。
コメントこの用語は異常に対する不完全な記述であるので,“背屈された趾(dorsiflexed toe)”というフレーズに置き換えられる[Yourgら,2005]。この用語は小槌趾(mallet toe)と同義語ではない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Dorsiflexed toe
手の全欠損 Hand, Absent#
定義橈骨や尺骨の遠位部に骨成分を認めない手の全欠損(客観的)(図 36)。
コメント類似語に Hand, partial absenceがある。
握りしめた手 Hand, Clenched#
定義すべての指趾が中手指節関節(MCPJ)と指節間関節(IPJ)で完全に屈曲している状態(主観的)(図 37)。
コメントCamptodactylyとは区別される。異常を認める指が 5 本よりも少なく,しかも, MCPJ を含まないという点で,Camptodactylyとは異なる。手指が手掌で屈曲位を取るとき,折り重なっていてもよい。観察される折り重なり指を別個に明記する必要はない。
骨性合指症 Hand, Osseous Syndactyly of#
定義硬性組織(軟骨かつ/または骨)による指趾(趾骨かつ/または中足骨)の側方(A/P)への癒合(客観的)(図 38)。
コメント中手骨合指症は, 2 つの中手骨が検者によって別個に手で動かせることで,実証される(この手技に関する記述については Mesoaxial polydactyly参照)。合指趾症を X 線写真なくして実証するのは難しいかもしれない(“mitten hand”とよばれてきたものでよくみられる)。この用語では癒合した骨を含む。骨性合指症は, Sympha-langyとは異なる。Symphalangyでは,長軸方向に指節骨の癒合が起きる(P/D 軸)。多指症を伴う場合,この用語の使用法に関する考察は, Mesoaxial polydactylyを参照。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Syndactyly(形容詞なしで用いる場合)
軸後性多指症 Hand, Postaxial Polydactyly of#
定義母指ではない,過剰指が存在すること(客観的)(図 39)。
コメント過剰指(母指ではない)はほとんどが尺側の指である,と多くの症例で信じられてきたが,これには明確なエビデンスがない。手指が小指であるとき,単純化の原理(parsimony)により,このことは理にかなっているように思える。その指が十分形成されており,過剰な中手骨を伴い,機能しているとき,どの指が過剰であるかを決めることは難しいかもしれない。とはいえ,軸後性に関する記述では,今までも使われてきたものだが,理にかなった表記法がある。軸後性の多指症は, 2 つの型に大別されてきた。すなわち, A が十分に形成された指,B が小さな,または肉茎程度の不明瞭な,機能しない付属物のような指である。軸後性多指症は実際, A から B までさまざまなスペクトラムがある点に留意すべきである。型が決められないときは亜型表記しない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Ulnar polydactyly;Posterior duplication of the limb/hand
軸前性多指症 Hand, Preaxial Polydac tyly of#
定義第 1 ray のすべてあるいは一部の重複(客観的)(図 40)。
コメントこの奇形のスペクトラムは幅広い。スペクトラムの軽い症状としては, 2 つに割れた爪,中央の欠落や二分された指尖を伴う母指末節骨,がある。前後の裂を認識できない幅広い母指は,Thumb,broadと表記すべきである。指の数は,軸前性多指症の所見に影響されるかもしれない。指趾の番号付けはイントロダクション参照。 ray 全体よりも少ない重複母指(中手骨と 2 つの指節)には“部分(partial)”を, 3 つすべての骨が完全に重複する指には“完全(complete)”を付記し用語を任意に修飾してよい。
同義語軸前性多指症(Anterior polydactyly)
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Anterior dupulication of the limb/hand;Radial polydactyly
手と足(Hand and Feet)
手の橈側偏位 Hand, Radial Deviation of#
定義手首において,手の長軸が軸前(橈骨)側方向に偏位すること(主観的)(図 41)。
コメントこの所見は,橈骨の短小や無形成と関連しているかもしれないが,定義の要件としてこれらは必要なく,別個に表記されるべきである。 “clubhand”という用語は,軽蔑的な意味を含むため,ほかの用語で代用される。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Radial clubhand;Clubhand
小さな手 Hand, Small#
定義年齢や体格に比べ全体的に小さく,正常な均整が保たれている手(さまざまな手の要素は互いに均整が取れている)(主観的)(図 42)。
コメントこれはバンドリング用語であるが,聞き慣れた用語であり,扱いづらくなるので,構成要素の所見について記載することはない。この
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Acromicria
裂手 Hand, Split#
定義第 1 もしくは第 5 指を除く,縦方向への手の指放射(digital ray)の欠損(主観的)(図 43)。
コメントSplit hand と診断するには,中央列(central ray)にある指節骨(F1 や F5 ではない)の全欠損,かつ少なくともその指と関連する中手骨の部分欠損を伴うものでなくてはならない(単なる,手指の喪失であれば, Absent fingerとすべきである)。 中央列やその他の列の欠損は,しばしば裂手の概観を呈する。 Split hand は指節骨の低形成や切断という形態に対し用いられてきた“ectrodac-tyly of the hand”と記載するのもよいが,広く使われる用語であることも事実である。カニ爪様変形“Lobster claw deformity”は叙述的な記載ではなく,軽蔑的な意味を含むため受け入れ難い表現である。患者の罹患した手のバリエーションは広いが,共通するのは中央列の欠損であり,臨床的な表記としては,Split handが最も適している。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Ectrodactyly;Lobster claw deformity
三叉手 Hand, trident#
定義F1 や F5 の相対的な位置関係は正常で, A/P 軸(手掌平面における)に沿って放射状に広がる F2-4(主観的)(図 44)。
コメントこの用語は,指の広がり方に対する亜型であるが,実用的な診断には,別個の定義が必要である。専門用語を扱うグループの間では,この用語に対するさまざまな定義が存在するため注意が必要である。しかしながら,ここで示す定義についてはコンセンサスが得られている。
手の尺側偏位 Hand, Ulnar Deviation of#
定義手首において,手の長軸が軸後(尺側)方向に偏位すること(主観的)(図 45)。
コメント尺骨の短小や無形成と関連することがあるが,定義に必要な所見ではない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Ulnar clubhand;Clubhand
突出した踵 Heel, Prominent#
定義踵の後方突出部における,とりわけ目立つ突起(主観的)(図 46)。
コメントこの所見に関しては,実用的な閾値や際立った特徴が見当たらないので,検者の経験に頼らなければならない。
小さな小指球 Hypothenar Eminence, Small#
定義手掌の尺側における筋肉量の減少(主観的)(図 47)。
コメント典型例では小指外転かつ短小指屈筋における軟部組織の減少がある。これは, Small thenar eminenceよりも区別するのがずっと難しいかもしれない。定義のなかでも,同じ考え方について要点がまとめられている。
巨指趾症 Macrodactyly#
定義反対側の非罹患指,または,年齢/体格から予測される指と比較して,指のほとんどあるいはすべての長さや周囲長が明らかに増大していること。周囲長は,指の側方および腹側および背側への増大を伴っている(主観的)(図 48)。
コメント指の周囲長に関する基準値は知られていない。一般集団でも実際には,指の周囲長はさまざまと考えられる。この所見は,期待されたものと,観察されたものとの大きさが有意に違うとき,検者の判断によって評価される。罹患している指を明記すべきである。増大したサイズの構成成分(骨成分,結合組織など)を定義では明示する必要はないが,浮腫は除外すべきである。周囲長は,指のほとんどなのか,または,全部なのかという要件は,巨指症と幅広い指尖とを区別する際,重要となる。巨指症では周囲長は全周を意味するので, Broad fingersあるいは Broad fin-gertipsと区別されなくてはならない。つまり,巨指症は幅広い指や指尖に対する用語ではなく,側方向(A/P)への幅だけが有意に増大している用語である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Megalodactyly;Pachydactyly・Megalodactyly:Macrodactylyを参照
短い中手骨 Metacarpal, Short#
定義同一の手の他の中手骨または反対側の中手骨と比較して, 1 つあるいはそれ以上の中手骨の長さが短いこと(主観的)(図 49)。
コメント中手骨短小は,いくつかの中手骨に及んでいる可能性がある,そして,罹患している列(ray)を明記すべきである。握ったとき手を手背側から観察することで,短い中手骨を評価することができる。もし, F2-5 の中手骨が短いのであれば,Short palmと修正すべきである。罹患している指を明記すべきである。
短い中足骨 Metatarsal, Short#
定義中足骨の長さが短く,結果的に関連する趾が近位部へ偏位した状態(主観的)(図 50)。
コメントこれは主観的な評価であり,一般的には,MTP 関節の位置を,対側の同部位と比較,あるいは,他の列(ray)と比べて短縮している列の位置とを比較することで評価される。罹患した指を明記すべきである。
内転中足 Metatasus, Adductus#
定義中足骨が脛骨側に偏位していること(主観的)(図 51)。
コメントこの所見に対する客観的な閾値がないので,主観的な考えに基づいた定義である。
幅の広い手掌 Palm, Broad#
定義出生後から 4 歳までの小児に対し,手掌の幅が平均値の 2 SD 以上あること,あるいは, 4 歳から 16 歳までの小児に対し,手掌の幅が 95 パーセンタイル以上あること(客観的)(図 52)。あるいは,手掌の幅が,手掌長に比べて不釣合いに広くみえること(主観的)。
コメント手の幅は, MCPJ のレベルで手掌を計測する(F2 の MCPJ の橈骨面から, F5 の MCPJ の尺骨面までを計測)[Hall ら,2007]。短い中手骨(short metacarpals)は幅広い手掌(broad palm)と似た病像を呈すことがあるので,主観的な評価には注意が必要である。過剰な中手骨を伴う多指症では,過剰な中手骨を別個に記述し,また,Hall らの計測法[ 2007]を用いる場合,過剰指を考慮した変法で計測する必要がある(たとえば,軸後性多指症で第 6 MCPJ まで計測する場合)。
長い手掌 Palm, Long#
定義出生後から 16 歳までは,手掌長が 97 パーセンタイル以上あること(客観的)(図 53)。手掌長が手指や四肢の長さに比べて相対的に長いこと(主観的)。
コメント手掌長については, Feingold と Bossert[1974]と Hall ら[2007]によって基準が示されている。手掌長は,手首の遠位屈曲線から,F3 の MCPJ の屈曲線までを計測する。“long hand”という用語は,2 つの別個の用語,Long fin-gers(前述のように,これ自体がバンドリング用語の可能性あり)と Long palmのバンドリング定義であり,用いるべきではない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Long hand
幅の狭い手掌 Palm, Narrow#
定義手掌の幅が,出生後から 4 歳児までは平均値の 2 SD 以上を下回っていること。 あるいは, 4 歳から 16 歳までは,手掌の幅が 5 パーセンタイル以下であること(客観的)(図 54)。あるいは,手掌の幅が,手掌長に比して不釣合いに狭く見えること(主観的)。
コメント手掌の幅は, MCPJ のレベルで手掌をまたいで計測する(F2 の MCPJ 橈骨側面から, F5 の MCPJ 尺骨側面まで)。Hall ら[2007]によって基準が示されている。手掌が不釣合いに長く,幅が狭くみえるだけで,手掌の幅は正常範囲かもしれないので,主観的な評価であることに注意すべきである。この所見は,一般的に細長い四肢と関連するのかもしれないが,細長い四肢が,狭い手掌と一致するわけではない。手掌近位部の狭小は,小さく低形成な母指球を示唆するものかもしれない。この用語は,そうでもないのだが,母指を含む印象が残るため,“narrow hands”を代わりに用いることがある。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Narrow hand
短い手掌 Palm, short#
定義出生後から 16 歳までの小児に対して,手掌長が 3 パーセンタイル以下であること(客観的)(図 55)。あるいは,手掌長が,指や四肢の長さに比べて相対的に小さく見えること(主観的)。
コメント手掌長については, Feingold と Bossert[1974]と Hall ら[2007]によって基準が示されている。この用語は,第 2-5 指の中手骨がすべて短縮している個体に対し用いられる。 4 本よりも短縮した中手骨が少ない個体では, Short metacarpalと表記すべきである。この所見に関するさまざまな意見に対しては, Small handのイントロを参照。“Short hand”は,すでにある 2 つの別個の用語,Short fingers(前述のように,これ自体,バンドリング用語の可能性あり)と Short palmの組み合わせになるので,用いるべきではない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Short hand・Palm,wide:Palm,broadを参照。
凹足 Pes, Cavus#
定義定常的な高い足底動脈弓の存在(主観的)(図 56)。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語High arch
扁平足 Pes, Planus#
定義立位時に,地面や床に足底弓が接触している足(客観的)(図 57)。 あるいは,横たわっている患者に対し,体重を支えているときにかかるのと同様の圧力で検者が足を圧迫した場合,足底弓が平板の表面に接触する足(客観的)。あるいは,足底弓の高さが減少している状態(主観的)。
コメント常識的な方法を用いて,どうしたら動けない個体にも 1 番目の定義を当てはめられるかと考え, 2 番目の定義を,このワーキンググループで考案した。この評価方法に関するデータはなく,有用性に関するフィードバックが必要である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Dropped arches;Fallen arches
軸間性多指症 Polydactyly, Mesoaxial#
定義関連のある骨性合指趾症を伴い,第 3-4 指趾の中手骨/中足骨を含む過剰指趾(母指趾ではない)が存在すること(客観的)(図 58)。
コメントX 線撮影を行わず,手の所見をとるために(X 線撮影の適応に関するさまざまな見解については Allanson ら[2009b]を参照),検者は,手の背側と手掌面において, 2 つの隣接する中手骨,母指と第 2 指を握り,別個に手で動かしてみる。もし,別個に動かなければ,骨性合指症が存在する。 Mesoaxial polydactyly というバンドリング用語の用法に関して,コンセンサスを得るに至っていない。したがって,当分の間は,専門用語の中に明記される。 2 つの別個の用語を用いて記載するほうが間違いなく優れている(たとえば,Osseous syndactyly of F3,4〔metacarpal〕と Postaxial polydactyly of the hand,type A)。 “insertional polydactyly”という用語は, “inser-tion”という言葉がメカニズムを意味するものであり,この発症メカニズムがおそらく挿入によるものではないことから,まず用いられない。この用語の用法については,何度か再検討すべきであろう。
同義語Cantral polydactyly;Intercalary poly-dactyly
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Insertional polydactyly
鏡画像を呈する多指趾症 Polydactyly, Mirror Image#
定義対称性の認識可能な A/P 軸をもつ,5 本以上の指趾を伴った手または足。その軸は,正常に形づくられていたり,あるいは,中指,人差し指,母指趾に似た部分的な重複指趾が存在しうる。あるいは,軸が中指,人差し指,母指趾に似た,隣接する一対の指をもち,指趾間に存在しうる。典型例では,手の両側にある最も外側の指趾が,第 5 指趾に似ている(主観的)(図 59)。
コメントこれは主観的な評価法である。多指趾症は明らかに客観的であるが,A/P 軸の対称性成分の評価は間違いなく主観的なものとなる。この所見では, 2 本の尺骨を伴う前腕が関連する可能性があるが,それは,この所見の必要な項目ではない。
手と足(Hand and Feet) 4
中手骨/中足骨の欠損 Ray, Absent#
定義関連する中手骨/中足骨のすべての指節骨の欠損(客観的)(図 60)。
コメントこの用語では,指節骨の欠損に加え,中手骨や中足骨の欠損が必要である。 Absent thumb,Absent hallux,Absent toes,Absent fin-gersとこの所見を比較すべきである。多くの場合,中手骨/中足骨の欠損が,触診によって評価できるが,なかには X 線撮影が役立つ場合もある。この定義は,Split handや Split footの除外が必要である。もし患者がこれらいずれの用語にも当てはまるのであれば,それらを使用すべきであり, Absent rayを用いるべきではない。
サンダルギャップ Sandal Gap#
定義第 1-2 趾間の幅広く開いた間隙(主観的)(図 61)。
コメント用語は主観的なものであるが,趾間の間隙は,第 2 趾の幅と同じぐらい広い。
凸状の論郭を伴う足底 Sole, Convex Contour of#
定義足の側面の曲線が,凸状に形づくられていること(主観的)(図 62)。
コメントこの用語は,尖った踵を伴わず凸状の曲線が形成されるときに使われるもので,バンドリング用語 Rocker bottom footも包含している。
小さな母指球 Thenar Eminence, Small#
定義母指周辺の手掌軟部組織の減量(主観的)(図 63)。
コメント減少している軟部組織は,通常,短母指外転筋と短母指屈筋群である。とくに軽度の症例では,異常所見の判定に,臨床的な判断が必要である。母指基部の筋群が減少すると,第 1 中手骨の手掌面上に軽度の凹面が認められるかもしれない。片側性の場合,両手を比較することで,母指球筋の曲面における軽微な変化に気づくだろう。程度の重い場合,手掌の幅は近位部にかけて先細りになるかもしれない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Thenar hypoplasia・Terminal phalanx,Short:Finger,short distal phalanx of;Hallux, short distal phalanx of;Thumb, short distal phalanx of;Toe, short distal phalanx ofを参照
Hypodactyly;Oligodactyly
母指欠損 Thumb, Absent#
定義母指の指節骨,および,それと関連する軟部組織,両方の欠損(客観的)(図 64)。
コメントこの用語では,中手骨の欠損は必要条件ではない。この定義では, Partial absence of the thumbを除外する必要がある。 Oligodactyly や hypodactyly は,母指と F2-5 の喪失を区別するよう,さらに特異的な用語で置き換えられてきた。“oligodactyly”という用語は,母指以外の指に対応する用語のため, “oligodactyly of thumb”や“oligodactyly F1”という言い方は無意味である。
内転母指 Thumb, Adducted#
定義安静時に母指の指尖が第 4-5 指の基部に接するか,近傍にあること(主観的)(図 65)。
コメント母指は屈曲内転している。ここで記述した以上に程度の軽い内転,たとえば, F2 あるいは F3 基部の近くまでしか母指の指尖が達していない場合も,この用語を用いてよい。
幅の広い母指 Thumb, Broad#
定義背側や腹側方向への増大がない,幅の広い母指(主観的)(図 66)。
コメント本来,母指の幅は個人差が大きく,この所見に関する閾値を設定することは難しい。通常,両側性なので,対側と比較することは役立たない。なかには, DIPJ で計測された第 2 指の幅の 1.5 倍以上ある母指(IP で計測)を Broad thumb と定義する,と提案しているものもある。しかし,これを支持するデータはない。この用語は,Macrodactylyに合致する母指については用いられるべきではない。出生時に 9.8 mm(1 SD= 0.5 mm)とする母指幅の基準値が報告されているが,広く用いられてないうえ,在胎週数や SGA の体格が考慮されていない。母指が短いとき,この評価が難しい。
同義語Broad pollex;Wide thumb・Thumb,digitalized:Thumb,triphalangealを参照
ヒッチハイカー母指 Thumb, Hitchhiker#
定義力の入っていない手と手掌平面にある母指において,母指の軸が手の長軸に対して 90°以上の角度にあること(客観的)(図 67)。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Abducted thumb
母指の部分欠損 Thumb, Partial Absence of#
コメント欠損部分を明記してもよい。“遠位の(distal)”という修飾語句は末節骨の欠損を示しており,臨床的には爪の欠損で定義される。この所見は Short thumbと区別される。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypophalangy
母指の近位位置異常 Thumb, Proximal Placement of#
定義母指位置指数(thumb placement index)が 0.55 より大きい(客観的)(図 69)。母指の基節部が通常よりも手首の近くにみえること(主観的)。
コメントthumb placement index の測定法については,Malina ら[1973],Hall ら[2007]が詳述している。簡単にいえば, thumb placement index とは,第 2 指の近位皮線から第 1 指間間隙の角度までの距離を,第 2 指の近位皮線から母指基節部の手関節屈曲皺までの距離で除したものである。この用語を,Preaxial polydactylyとともに用いるべきではない。
三関節母指 Thumb, Triphalangeal#
定義近位から遠位へかかる一つの軸において,3 指節骨を有す母指(客観的)(図 70)。
コメント1 つの PD 軸上で,という条件が必要な理由は,Preaxial polydactylyの一部において,2 つの末節骨と 1 つの基節骨を有す,部分重複母指の形態を呈した場合,問題となるからである。この所見は,母指多指症の軽症型で代用される。三関節母指は,母指を診察かつ/または理学的に触診することで評価できる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Digutalized thumb;Finger-like thumb
欠趾症 Toe, Absent#
定義母趾ではない,すべての趾の趾節骨および関連する軟部組織の欠損(客観的)(図 71)。
コメントこの用語では,中足骨の欠損は必要項目ではない。難しいかもしれないが,罹患した趾を明記すべきである。後者の場合であれば,(失われた趾の由来は特定できないので)Absent toe, right foot と表記すべきである。この定義は, Par-tial absence of the toeを除外している。この, absent toe という定義は,Absent halluxを考慮していない。なぜなら,失われた趾が母趾であれば,通常明白だからである。極端な骨性かつ皮膚性合趾症を有す 2 つの趾と無趾症(absent toe)を区別することは難しいかもしれない。もしすべての趾が喪失していたら,Adactylyという用語を使用すべきである。 Oligodactyly という用語は,同義語として用いられるかもしれないが,失われた趾が特定されない場合に限られる。たとえば,患者が olygodactyly F5 を有す,と記載するのは誤りである,なぜなら, oligodactyly は実在する趾に使われ,しかも F5 が欠損している趾に用いられているからである。これは厄介な問題であり,多く欠損した趾の序列を決める際に混乱を招く可能性がある。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypodactyly
幅の広い趾 Toe, Broad#
定義背側腹側方向に増大せず,明らかに幅が増大している母趾以外の趾(主観的)(図 72)。
コメント幅広い趾では周囲長が増大するかもしれないので注意すべきであるが,加えて長さも増大する Macrodactylyとは区別しなくてならない。罹患した趾は明記されるべきである。趾が短いと,この評価は難しいかもしれない。この用語は,第 1 趾には用いられない, Broad hallux参照。もし, 5 本すべての趾が幅広いならば,その患者には,両方の用語を用いるべきである。
皮膚性合趾症 Toe, Cutaneous Syndactyly of#
定義2 つの趾の一方の P/D 軸の長さの少なくとも半分を含んだ,隣接する趾の間で, A/P 軸上でみられる軟部組織の連続性(客観的)(図 73)。あるいは,先の客観的なクライテリアに合致しない 2 つの趾の間で,A/P 軸上で軟部組織が連続していること(主観的)。
コメント趾(または一部)が, P/D 軸上にある趾間において,通常存在し得ない軟部組織によって結合していること。合趾症の定義は,合指症のそれと若干異なっている。趾節骨の長さが短く,程度の評価が実用的ではないため,手の定義を足に用いるのは困難と考えられてきた。“完全(complete)”という修飾語句は,合趾症が爪床の末端部まで続くのであれば,使われるかもしれない。罹患した趾を明記すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Syndactyly(without specification);Zygodactyly
参照- Toe, great;第 1 趾にあたる語は‘Hallux’や‘ Toe’で始まる語で列挙されている。
- Toe,hypoplastic→Toe,small
長い趾 Toe, Long#
定義足に比して不釣合いに長くみえる趾(主観的)(図 74)。
コメントこの所見は,正常な趾の長さであるものの薄い趾節骨や,正常な長さの趾をもつ中足かつ後足の趾節骨と区別されなければならない。罹患した趾を明記すべきである。 Arachnodactyly という用語は,患者の指趾を蜘蛛のそれに似ている,と軽蔑して表現したものと考えられ,用いるべきではない。四肢の一塊の趾だけが長いのであれば,罹患した趾を詳記すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Arachnodactyly
折り重なり趾 Toe, Overlapping#
定義安静時に隣接する趾の背側表面に重なっている足を表記したもの(客観的)(図 75)。
コメントこの用語は,イントロダクション(項目 3)で示されたように,どの趾が関与しているかにしたがって序列化される。たとえば, T3,4 では,序列化した番号は,どの趾から背側にあるかを明示している,すなわち足の背側が上方に向いている状態で,まず一番上にある趾が記録され,折り重なっている趾から順にカンマで区切られる。側方に偏位するものの,隣接する趾には重ならない趾は,Clinodactylyとして表記すべきである。
趾の部分欠損 Toe, Partial Absence of#
定義足趾あるいは母趾の指節骨の部分的な欠損(客観的)(図 76)。
コメント欠損した趾の一部は明示されるかもしれない。“遠位の(distal)”という修飾語句は末節骨の欠損を示すもので,これは臨床的には爪の欠損によって定義される。“近位の(proximal)”という修飾語句は,爪が存在する基節骨あるいは中節骨の欠損を示すものである。X 線撮影なしにどの指節骨が欠損したか知るのは難しく,撮影しても失われた骨は同定されないかもしれない(中節骨と基節骨を区別しようとするのは難しい)。この場合,隣接する状況は除外されるべきである。この所見は, Short toes(長さの減少はあるものの,指節骨の数は正常な状態)と区別しなければならない。 Partial absence of the halluxは母趾に対して用いるべき,もう一つの用語である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypophalangy
短趾症 Toe, Short#
定義足に比して不釣合いに短く見える趾(主観的)(図 77)。
コメント周囲長の増大はあるものの長さ正常な趾,および正常な長さの趾を有す中後足の趾と,この所見は区別されなければならない。罹患した趾は,イントロ内の既述のように,明記されるべきである。同義語として brachydactyly を記載したが,この用語の使用法は Bell の分類法での同じ言葉の使い方と区別する必要がある(Short fin-gers参照)。
同義語Brachydactyly of the foot
手と足(Hand and Feet)
趾の末節骨短小 Toe, Short Distal Phalanx of#
定義趾端部から最も遠位にある指節間皺あるいは DIPJ 屈曲点までの距離が短いこと(主観的)(図 78)。
コメントこの用語は,Partial absence of the toeとは異なる。なぜなら,その用語では趾節骨を失われなければならないが,ここで用いる用語は小さな趾節骨が存在するからである。趾の末節骨の相対的な短縮を評価するのは,通常きわめて短いので,指の相対的短小を評価するより難しい。末節骨長は,趾節をその趾の残りの部分や,患者のほかの正常な趾,あるいは同年齢の典型的な患者と比較することで,主観的に評価できる。屈曲線は手において役立ちうるもの(Short distal phalanx of the finger参照)だが,足での実用性は乏しいかもしれない。その代わりに,関節を触診できるかもしれない。
細長い趾 Toe, Slender#
定義手足のサイズや個体の体格に比して不釣合いに狭い(周囲長の減少した)指趾(主観的)(図 79)。
コメント罹患した指趾を明記すべきである。この所見の評価は,指趾が長い場合,難しくなる。バンドリング用語,かつ軽蔑的な意味を含む arachnodactyly は,Long toeや Slender toeといった別個の記述子で置き換えられる。
同義語Narrow digit;Narrow toe
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Thin digits;Arachnodactyly
小さな趾 Toe, Small#
定義対側の趾や,あるいは,年齢がマッチする個体の典型的な趾のサイズと比較して,長さと周囲長の両方が有意に減少している趾(主観的)(図 80)。
コメントこれは,広く知られたバンドリング用語である。この所見には基準値がなく,臨床的な判断が必要とされる。罹患した趾を番号付けすべきである。
裾広がりの趾 Toe, Splayed#
定義A/P 軸に沿った趾の(足底の平面において)偏位(主観的)(図 81)。
コメントこれは, Macrodactylyと関連する部分があるかもしれないが,別個に扱わなければならない。罹患した趾を明記すべきである。
同義語Spreading of the digits
先細り趾 Toe, Tapered#
定義近位から遠位にかけて,周囲長が徐々に減少した趾(主観的)(図 82)。
コメント趾が一様に罹患していなければ,それらを明記すべきである。もし,明記されていなければ,足のすべての趾を注意して観察する。
広く開大した趾間 Toes, Widely Spaced#
定義趾間において全体的に広く間隔の開いた趾(主観的)(図 83)。
コメントこの記述は趾間間隙の広さに基づく。それは趾が薄く狭い状態よりも,むしろ趾の幅が正常な状態のときに用いられる。この用語は所見が T1,2 間の間隙に限定される状況では用いるべきではない(Sandal gap参照)。
手掌皮線 CREASES#
定義主な 3 つの手掌皮線に関する略図(図 84)を参照。 Distal transverse crease の一端は,第 2 指あるいは第 2 指間スペース基部の近位,橈骨側にあり,手掌の尺側に向けて伸びる。 Proximal trans-verse crease の一端は,第 1 指間にある手掌の橈骨(前方)側から始まり,手掌を横切り尺側まで伸びる(通常,尺側に達しない)。Thenar crease の一端は, proximal transverse crease の橈骨側部分と一致し,手首に向かい近位部へ伸びる。
手掌皮線の欠損 Palmar Crease, Absent#
定義手掌の主な皮線(distal transverse crease,proximal transverse crease,thenar crease)の欠損(主観的)(図 85)。
コメントこの用語は,単一の手掌屈曲線(sin-gle transverse palmar crease)を認める患者で,“失われた”皺を記述する際には用いられない。
架橋する手掌皮線 Palmar Crease, Bridged#
定義近位と遠位の transverse palmar crease を結合する皺(客観的)(図 86)。
コメント2 つの transverse crease を架橋する皺は,長軸(近位-遠位)方向よりも,横断(前後)方向へ伸展するものが多い。
同義語Transitional palmar crease
減少した手掌皮線 Palmar Creases, Decresed#
定義明瞭ではない,または,浅い手掌皺(主観的)(図 87)。
コメントこれは完全に主観的な用語であり,この所見とよくある皺のバリエーションとの区別は,経験ある検者でないと難しい。それは,皺の全体的な減少を指しており,皺の部分的な減少を指すものではない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Smooth palms
深い手掌皮線 Palmar Crease, Deep#
コメントDecreased palmar creasesという用語のように,この所見とよくある皺のバリエーションとの区別は,経験ある検者でないと難しい。一つの考え方ではあるが,深い皺とは,たとえ手掌が十分に開いた状態でも,汚れがまだこびりついているような皺を意味する。
単一手掌屈曲腺 Palmar Crease, Single Transverse#
定義遠位と近位の transverse crease が単一手掌屈曲線(single transverse palmar crease)に融合したもの(客観的)(図 89)。
コメントProximal transverse crease と関連する“five finger crease”という用語は, Hall ら[2007]に起源するものである。単一手掌屈曲線のいくつかの亜型は,ここでは認められていない。“サルのような皮線(simian crease)”という用語は,軽蔑した意味を含んでおり,ほとんど意味をなさない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Simian crease
長軸方向の深い足底皮線 Plantar Crease, Deep Longitudinal#
定義前足の足底皮膚において,傍正中位,長軸方向に伸びた狭いくぼみ(主観的)(図 90)。
コメント数多くの他の用語と同様,臨床医がこの所見を評価する閾値や指針は存在しない。代わりに,臨床医は経験を必要とする。
シドニー皺 Sydney Crease#
定義手掌の尺側端まで伸びる , proximal transverse crease(five finger crease)(客観的)(図 91)。
コメントproximal transverse(five finger) crease は,第 2 指の基部近くの橈骨側から始まり,手掌の尺側へ向けて伸びるが尺側までは届かない。Sydney crease では,皺が完全に手掌の尺側縁まで伸長している。
爪(NAILS)
二分爪 Nail, Bifid#
定義少なくとも 2 つの爪の間に,何らかの軟部組織を有する指趾(主観的)(図 92)。
コメント二分爪に関連する事項については, Preaxial polydactylyの定義を参照。罹患した指趾を明記すべきである。もし患者に,完全に分割された爪を伴った,部分的な重複指趾を認めるのであれば,この用語を使うべきではない。
凹状爪 Nail, Concave#
定義自然にみられる長軸(P/D)方向への凸面アーチが,存在しないか,反転した状態(主観的)(図 93)。
コメントしばしば結果的に皿状爪や匙状爪を呈し,典型例では爪の端部が反転する。罹患した指趾を明記すべきである。バンドリング用語 koi-lonychia は爪の形態異常,すなわち爪の縁がめくり上がったり,薄くなったり,凹状になることを意味する言葉である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Koilonychia;Spoon shaped nails Nails,dystrophic:“dystrophic”という用語は,通常と異なる形態を示す爪に対し使う用語としては,もはや用いられていない。
融合爪 Nails, Fused#
定義部分的に分割された爪をもち,長軸方向に分かれている爪板。これらはそれぞれ屈曲し分割された橈骨外側をもつ(主観的)(図 94)。
コメント“Fused”という言葉が使われているが,病理学的にこれらの爪が分かれ融合したことを意味するものではない。融合爪(fused nail)は,爪の 2 つの部分が彎曲した同じ橈骨を共有しており,裂爪(split nail)または分割爪(cleaved nail)と区別される。関連している指趾を明記すべきである。潜在的な合趾症の趾と関連するものかもしれないが,これらは別個に記述される。
過度に凸化した爪 Nail, Hyperconvex#
定義端を見たときに(指先が検者の眼の方をさしている状態で),爪の曲線がきつい凸状のカーブを描くこと(主観的)(図 95)。
コメントこの所見に関しては客観的な基準値は定められていない。この所見に関する別の表記法として,観察された曲線が,典型的な爪と比べて,小さな半径を描いている,というものがある。罹患した指趾を明記すべきである。
幅の狭い爪 Nail, Narrow#
爪のくぼみ Nail Pits#
定義背側からみえる爪表面の小さなくぼみ(典型例では 1 mm 以下)(主観的)(図 97)
爪の線状隆起 Nail, Ridged#
定義爪板における長軸方向の線状隆起(主観的)(図 98)。
コメント隆起は 1 つだけのことも複数のこともある。罹患した指を明記すべきである。
短い爪 Nail, Short#
コメント爪の長さが短いものの,幅は正常なときこの表記を使う。新生児の標準値は知られている[Seaborg と Bodurtha, 1989]が,年長者の基準値は明らかではない。よって,新生児に関しては客観的といえるが,測定されるのはまれである。罹患した指を明記すべきである。
小さな爪 Nail, Small#
定義長さと幅が減少している爪(主観的)(図 100)。
コメントこれはバンドリング用語であるが,よく使われるので残されている。 Short nailと Narrow nailの両方を有しているというように,記述するのが望ましいのかもしれないが,爪の幅と長さが減少していればこの用語を用いてよい。新生児の標準値は知られている[Seaborg と Bodurtha, 1989]が,年長者の基準値は明らかではない。よって,新生児に関しては客観的といえるが,測定されるのはまれである。罹患した指を明記すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Hypoplastic nails
分裂爪 Nail, Split#
定義長手方向への分離がみられ, 2 つに分かれた部分を有す爪板が彎曲した同じ橈骨外側側面を共有していること(主観的)(図 101)。
コメントこれは Fused nailとは,爪の 2 つの部分が別個の彎曲した橈骨を共有している点で異なる。イントロダクションで述べられているように,罹患した指を明記すべきである。
爪肥厚 Nail, Thick#
定義端から見たときに厚くみえる爪(主観的)(図 102)。
コメント爪の厚さに関する客観的な基準値は知られていないが,根拠のない主張ながら,女性で 0.5 mm,男性で 0.6 mm というものがウェブ上(http://www.emedicine.com/orthoped/topic421.htm)に掲載されている。爪板が爪床から持ち上がるようケラチンが積み上がる。厚くなった爪板は通常とても硬い。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Onychogryposis;Pachyonychia
薄い爪 Nail, Thin#
定義爪の端から見たときに爪が薄くみえる(主観的)(図 103)。
コメント爪の厚さに関する客観的な基準値は知られていないが,根拠のない主張ながら,女性で 0.5 mm,男性で 0.6 mm というものがウェブ上(http://www.emedicine.com/orthoped/topic421.htm)に掲載されている。薄い爪は通常もろく,爪縁で容易に擦り減り,割れる可能性がある。薄い爪はゆっくり伸びるが,この条件は定義上必要ではない。Koilonychia は,指の爪が縁で捲れあがったり,薄かったり,凹状になっているなど,異常な形態を示す用語である。薄い爪以外の他の特徴も含む用語であり,爪が薄いことを示す場合,使用すべきではない。罹患した指趾を明記すべきである。
本アトラスは,American Journal of Medical Genetics
2009年第1号「Elements of Morphology: Standard Terminology」の日本語訳です。
翻訳内容は雑誌「小児内科」42巻8号(東京医学社)に発表されたもので,
東京医学社のご快諾のもと掲載しています。