口唇,口,口腔内領域
口:定義
口角瘻 Commissural Pit#
コメントこの孔は口唇の小窩(lip pit)とは無関係。
Cupid's bow の欠如 Cupid's Bow, Absent#
定義正中稜と上口唇唇紅の正中部切痕の欠如(客観的)(図 4)。
コメントこの弓状の形は,薄い上口唇(thin vermilion of the upper lip)の場合,認められないことがしばしばあり,別に評価すべきである。この表現は通常,平坦な人中(smooth philtrum)と関連しているが,用語としては別である[ Hen-nekam ら, 2009]。
目立つ Cupid's bow(二重弓形) Cupid's Bow, Exaggerated#
コメント深い人中と関連するが,別に扱う[Hennekam ら, 2009]。
同義語Cupid’s bow accenttuated
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Cupid’s bow(形容詞なしで使用される場合)
口唇斑 Lip Freckle#
定義口唇の朱部分の部分的色素沈着の増加(主観的)(図 6)。
コメント口唇斑は,口唇周囲の皮膚の色素沈着(perioral hyperpigmentation)に伴うかもしれないが,口唇周囲の皮膚の色素沈着とは別に評価すべきである。黒子は通常,朱部分の色素斑と同義語として用いられることが多いが,皮膚におけるものとは異なるものである。
参照- Lip, coarse→Vermilion, upper lip, thick
- Lip, full→Vermilion, upper lip, thin
- Lip, lentigo→Lip freckle
- Lip, lower drooping→Vermilion, lower lip, everted
- Lip, lower full→Vermilion, lower lip, thick
- Lip, lower thick→Vermilion, lower lip, thick
口唇小窩 Lip Pit#
定義下口唇の朱部分にある窪み。通常,傍正中部にある(客観的)(図 7)。
コメント口唇の窪み(小窩)は瘻孔として小唾液腺粘膜に開口している可能性あり。ときに周囲の組織の盛り上がりを伴うこともある。唇交連にある窪み(口角瘻)は口唇のものと別に扱う。
参照- Lip, thick→Vermilion, upper lip, thick
- Lip, upper thin→Vermilion, upper lip, thin
- Mouth, tented→Vermilion, upper lip, tented
- Nasolabial crease, hypoplastic→Nasolabial fold, underdeveloped
- Nasolabial crease, prominent→Nasolabial fold, prominent
- Nasolabial crease, underdeveloped→Nasola-bial fold, underdeveloped
目立つ鼻唇溝 Nasolabial Fold, Prominent#
定義顔面の皮膚と鼻の基部が接する部分から口角の外側へ向かう鼻の外側縁に沿って走る皮膚のひだ・溝の誇張,かさばり(糸状,交連)(主観的)(図 8)。
コメント通常,年齢ととも隆起は大きくなる。 Allanson ら(2009 b)を参照。
同義語鼻唇溝(nasolabial crease)隆起
鼻唇溝,発育不全 Nasolabial Fold, Underdeveloped#
定義顔面の皮膚と鼻の基部が接する部分から口角の外側へ向かう鼻の外側縁に沿って走る皮膚のひだ・溝の発育不全(主観的)(図 9)。
コメントAllanson ら(2009 b)参照。
同義語鼻唇溝発育不全(nasolabial crease, underdeveloped)
過去に使われたが言い換えが望ましい用語鼻唇溝低形成(Nasolabial crease/fold, hypoplastic)
口囲色素沈着 Perioral Hyperpigmentation#
定義唇紅の周囲の皮膚の一部または全体に皮膚の色素沈着の増加(主観的)(図 10)。
コメント口唇斑(lip freckling)に随伴する可能性もあるが,別に扱う。
唇紅,下口唇反転 Vermilion, Lower Lip, Everted#
定義正面から下口唇の内側が見える状態(通常は歯に並びに沿う)(主観的)(図 11)。
コメント正面から,平静時,下口唇の高さが通常より高く,下切歯がみえる。鼻顔角面では,唇紅は凸型に突出している。反転した口唇は,とがらしたように見えるが,これは,機能的な用途に用いるべき単語である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語下口唇下垂(drooping lower lip)
唇紅,下口唇,肥厚 Vermilion,Lower Lip,Thick#
定義正中において,下口唇の唇紅の高さが平均より 2 SD 以上の高さ(客観的)(図 12)。または正面において,下口唇の唇紅の高さの増大(主観的)。
コメント唇紅の高さの正常値は[ Farkas, 1981]参照。ただし,測定は通常行われていない。ほとんどの臨床医は主観的にこの形態をとらえている。下口唇は典型的には上口唇より厚い。下口唇の唇紅の高さは民族差があり,同じ民族集団のなかで比較すべきである。唇紅が厚い時,鼻顔角面では,さらに突出・反転しているが,両者は個別に評価すべきであろう。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Thick lower lip,厚い下口唇(Full lower lip)
唇紅,下口唇,薄い Vermilion,Lower Lip,Thin#
定義正中において,下口唇の唇紅の高さが平均より 2 SD 以下の高さ(客観的)(図 13)。または正面において,下口唇の唇紅の高さの明かな減退(主観的)。
コメント唇紅の高さの正常値は[ Farkas, 1981]参照。ただし,測定は通常行われていない。ほとんどの臨床医は主観的にこの形態をとらえている。下口唇の唇紅の高さは民族差があり,同じ民族集団のなかで比較すべきである。下口唇・唇紅が薄いとき,唇紅の下縁はゆるやかな弓状を呈し,鼻顔角面では下口唇は通常より突出していない。
唇紅,上口唇,反転 Vermilion, Upper Lip, Everted#
定義正面から下口唇の内側が見える状態(通常は歯に並び沿う)(主観的)(図 14)。
コメント正面からみると,平静時に上口唇の高さが過剰であり,下切歯がみえる状態。鼻顔角面では,唇紅は凸型に突出している。反転した口唇は短い人中に伴い,二次的に上歯が突出しているように見えるが,これは別に評価すべきである。
唇紅,上口唇,テント状 Vermilion,Upper Lip,Tented#
定義上口唇の正中先端部分と底辺をなす下口唇により口腔の形状が三角を呈する(主観的)(図 15)。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語テント状の口(tented mouth)
唇紅,上口唇,厚い Vermilion, Upper Lip, Thick#
定義正中において,上口唇の唇紅の高さが平均より 2 SD 以上の高さ(客観的)(図 16)。または正面において,下口唇の唇紅の高さの明らかな増大(主観的)。
コメント唇紅の高さの正常値は[ Farkas, 1981]参照。ただし,測定は通常行われていない。ほとんどの臨床医は主観的にこの形態をとらえたり,または Likert scale[Astley と Clarren,2000]を用いている(図 17)。上口唇の唇紅の高さには民族差があり,同じ民族集団のなかで比較すべきである。上口唇・唇紅の厚さは顔の表情に影響を及ぼす。鼻顔角面では,唇紅は凸型に突出している。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語粗な口(coarse lip),thick lip,full lip
唇紅,上口唇,薄い Vermilion, Upper Lip, Thin#
定義正中において,上口唇の唇紅の高さが平均より 2 SD 以下の高さ(客観的)(図 18)。または,正面において下口唇の唇紅の高さの明かな減退(主観的)。
コメント唇紅の高さの正常値は[ Farkas, 1981]参照。ただし,測定は通常行われていない。ほとんどの臨床医は主観的にこの形態をとらえたり,または Likert scale[Astley and Clarren,2000]を用いる(図 17)。上口唇の唇紅の高さには民族差があり,同じ民族集団のなかで比較すべきである。上口唇・唇紅の厚さは顔の表情に影響を及ぼす。側面から観察すると,唇紅は通常より引っ込んでいる。平坦な人中に随伴するものや, Cupid’s bow の欠如に伴い,二次的に上口唇が薄く見えるが,これは別に評価すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語薄い唇紅縁(Thin vermilion border),薄い上口唇(Thin upper Lip)
口腔 2
線維性癒合 Fibrous Syngnathia#
定義完全または歯槽堤のほぼ完全な軟部組織融合(主観的)(図 19)。
コメント上下顎の重度の運動の減少や欠如のある患児に認められる。口腔癒着(Oral synechiae)を含む重症型でも認められる。
同義語歯槽堤癒着(Fusion of the alveolar ridges)
口腔内色素沈着 Hyperpigmentation, Intra-Oral#
定義口腔粘膜の局所または全体の色素の増加(主観的)(図 20)。
コメント濃い皮膚の色素沈着のある人の歯槽堤に色素沈着を認めることはよくあることである。この用語は,雀卵斑から口腔全体の色素沈着までの幅広い色素所見を含む。
口,下向きの口角 Mouth, Downturned Corners of#
定義口交連が正中の口唇溝から下方に向かう(主観的)(図 21)。
コメント口を閉じて,口唇は緩やかに接し,顔も安静にした状態で評価する。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語鯉状の口(Carp mouth),魚の口(Fish mouth)(軽蔑語)
口,狭い Mouth, Narrow#
定義口交連間の距離が一般人の 2 SD 以下(客観的)(図 22)。または,口腔の幅が明らかに狭い。
コメント口腔の幅は,顔の動きにより変化する。そのため,安静な(落ち着いた)顔で評価すべきである。小口症,小さな口腔,「小さな口」という用語の代わりに「狭い口」という用語を使用すべきである。開口部が小さいことは「口の横幅が小さいこと」に対して二次的に生じているためである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語小口症(Microstomia),小さな口腔(Small oral aperture),小さな口(Small mouth)
口,上向きの口角 Mouth, Upturned Corners of#
定義口交連が正中の口唇溝から上方に向かう(主観的)(図 23)。
コメント口を閉じて,口唇は緩やかに接し,顔も安静にした状態で評価する。上口唇が増大(腫脹)している時に上向きの口角があるかどうかの評価は困難かもしれない。
口,広い Mouth, Wide#
定義口交連間の距離が一般人の 2 SD 以上(客観的)。または口腔の幅が明らかに広い(主観的)(図 24)。
コメント口腔の幅は顔の動きにより変化する。そのため,安静(落ち着いた)顔で評価すべきである。この用語は広く開いている口全体を含み,巨口症,広い口,大きな口と置換される。外側方に口裂のある患者には用いない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語巨口症(Macrostomia),広い口腔(Large oral aper- ture),大きな口(Large mouth)。
口小帯 Oral Frenulum, Accessory#
定義歯槽堤から,上口唇または下口唇の内側表面へつながる余剰な組織ヒダ(客観的)(図 25)。
コメントこの所見は,口腔粘膜を歯槽堤から軽く話すように引っ張ったときに,より顕著となる。通常は, 2 つの切歯の正中に上顎と下顎の口小帯がある。副小帯に異常な歯槽堤を伴う場合があるが,別の所見として評価すべきである。
同義語副小帯(Supernumerary oral frenulum),余剰口小帯(Extra oral frenulum)
口癒着 Oral Synechia#
定義上下の歯槽堤の粘膜表面を結ぶ線維性の帯(客観的)(図 26)。
コメントこれらの帯は舌と口蓋を結ぶ帯(舌口蓋強直)や,口腔底(舌口蓋下膜),口咽頭峡部(連続頬咽頭膜),下口唇からの小帯とは異なる[Gorlin ら,2001]。 上下の歯槽堤を完全に接触する軟部組織であれば,線維性癒着(Fibrous syngnathia)という。
U 字型の唇紅・上口唇 Vermilion, Upper Lip, U-Shaped#
定義上口唇の唇紅の緩やかな上向きのカーブ,中央部は交連の上部に位置する(主観的)(図 27)。
コメントテント状の上唇紅(tented upper lip vermilion)という表現があるが, U 字型の上部の唇紅では上唇紅はさらに丸みをおびている。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語鯉の口(carp mouth),魚の口(fish mouthi;軽蔑語), U 字型の口(U-shaped mouth)
歯槽堤過形成 Alveolar Ridge Overgrowth#
コメント歯槽提の高さに関わらない。口蓋縁の突出や歯肉腫大とは混同しないこと。ただし,中等度の歯槽提の腫大(Prominent palatal ridges)と歯肉の過形成(Gingival overgrowth)を区別することは容易ではない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語歯槽堤の腫大(Alveolar ridge hypertrophy)
舌癒着 Ankyloglossia#
定義舌小帯が前方に付着または短く,舌運動の制限を伴う(主観的)(図 29)。
コメント舌の前方 1/3 は通常,固定されていない,または不規則な小帯により,部分的に口腔底に付着している。口腔底の舌の癒着(下舌癒着)から,短い舌小帯か舌の先端(舌帯)までを含む。舌癒着は舌尖の軽度の陥入をともなうことがあるが,二分舌(Bifid tongue)とは異なる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語下方舌癒着(Ankyloglossia inferiorum),舌帯(tongue tie)
上顎単一中切歯 Central Incisor, Single Maxillary#
定義正中にある上顎の単一の中切歯(客観的)(図 30)。
コメント上顎の単一の中切歯が正中にない場合,無歯症(Oligodontia)の可能性があるが, X 線撮影なしでは評価できない。
歯叢生 Dental Crowding#
定義歯槽堤内に歯が重なりあっている状態(主観的)(図 31)。
コメントこの用語はバンドリング用語である。歯槽堤の大きさに比して歯の大きさや数が不均衡である。
歯間離開 Diastema#
定義同じ歯弓裂で,隣接する 2 つの歯の間の増大(主観的)(図 32)。
コメント通常,永久歯同士は中央部分では接している。「歯間離開」という表現はいずれの歯間にも用いてもよい。この用語は, widely spaced teethとは区別して用いられるべきである。
早期萌出 Eruption, Advanced#
定義平均的な萌出期より 2 SD 早い歯の萌出(客観的)。
コメント乳歯・永久歯の萌出時期は確立されている[ Garn, 1966;Lunt と Law, 1974;McDon-ald ら,2004]。萌出は歯肉に突出した歯が現れたことをいう。
萌出遅延 Eruption, Delayed#
定義平均的な萌出期より 2 SD 以上遅れて歯が萌出する(客観的)。
コメント歯肉過成長(Gingival overgrowth)の患者には用いない。乳歯・永久歯の萌出時期は確立されている[Garn, 1966;Lunt と Law, 1974; McDonald ら,2004]。歯肉を突き抜けて歯が現れた状態をもって「萌出」と称する。
参照- Gingival hyperplasia:Gingival overgrowth参照・Gingival hypertrophy:Gingival overgrowth参照
歯肉過形成(肥厚) Gingival Overgrowth#
定義歯肉縁を縁取る軟部組織の肥厚(主観的)(図 33)。
コメント肥厚の程度は,歯間乳頭のみの肥厚から歯冠全体を覆うほどの肥厚まで幅がある。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語歯肉肥大(gingival hypertrophy),歯肉増殖(gingival hyperplasia)
舌根沈下 Glossoptosis#
定義舌が咽頭内へ,後方に位置すること(主観的)(図 34)。
コメント“沈下”という接尾辞は,患者が仰臥位にあるときに舌が「後方に」落ち込むことを指して命名されたものである。後方という単語に置換される。厳密にいえば,舌根沈下という語句は単に舌の落ち込みを意味するものであり,前方への落ち込みを指してもよい。しかし,慣例により,後方への落ち込みに対してのみ, glossoptosis という用語を用いる。舌根沈下は気道閉塞を起こす可能性がある。
巨(大)歯 Macrodontia#
定義歯の前後径が一般人口の 2 SD 以上(客観的)(図 35)。明らかな歯の最大幅の増大(主観的)。
コメント平均と標準偏差の値は性別により異なる[Moyers ら,1976]。
矮小歯 Microdontia#
定義近遠歯の直径が平均年齢の 2 SD 以下(客観的)(図 36)。明らかな歯の最大幅の減少(主観的)。
コメント標準は,性差により,平均と標準偏差がある[ Moyers ら,1976]。矮小歯では,とくに前上下の歯間隙が大きいと,正中離開(Diaste-mata)を生じる。これは別に評価すべきである。
乏歯症 Oligodontia#
コメント「乏歯症」という所見や「無歯症」「歯牙無形成,歯牙低形成」という所見を診断するには,X 線写真による評価を必要とするので,ここでは記載をしない。歯牙低形成(hypodontia)や乏歯症(oligodontia)という用語は文献上,同義に用いられることがある。一方, 6 本以下の歯が欠如しているときに歯牙低形成, 6 本以上の歯牙が欠損しているときに乏歯症と称する場合もある。歯無形成や乏歯症・無歯症は萌出遅延と間違わられる場合もあるが,両者は X 線写真撮影によってのみ区別される。歯の欠損は,先天性である場合も後天性である場合もある。先天性無歯の頻度は歯の種類や位置により異なる[Gorlin ら, 2001]。
開咬 Open Bite#
定義咬み合った状態で歯弓の間から見える空間があること(客観的)(図 37)。
コメント開口は, 2 つの歯槽弓の垂直な重なりが欠如している。不正咬合に関連していることもあるが,それぞれの所見を記載すること。開咬は不正咬合によって生じる場合もあることから,開咬はバンドリング用語であるといえる。不正咬合の特性分類のために,矯正歯科[ Moyers ら, 1973]では, Angel 分類(クラスⅠ~Ⅲ)を広く用いられる。
短い硬口蓋 Palate, Hard, Short#
定義切歯乳頭のひだから軟口蓋と硬口蓋の正中接合部の距離が 2 SD 未満(客観的)。または明らかな,高口蓋の長さの短縮(主観的)(図 38)。
コメント硬口蓋の大きさの客観的な測定には,特別な器具を要する[ Hall ら,2006]。短い硬口蓋は鼻咽腔閉鎖不全と関係していることもある。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語Short palate;hypoplastic palate
高口蓋 Palate, High#
定義口蓋の高さが平均より 2 SD 以上高い(客観的)。第一永久歯の位置で,口蓋の高さが,第一永久歯の高さの 2 倍以上(主観的)(図 39)。
コメントこの評価の測定法は Hall ら(2006)によって記されている。高口蓋はしばしば,狭い口蓋と関連している。しかし,狭い口蓋は,高口蓋と誤認されやすい。高く広い口蓋は別に評価すべきである。この用語は不正確に誤用されることが多いので,主観的な方法による評価を勧めない。
同義語高い口蓋(High, arched palate)・Palate, high arched:Palate, highを参照
狭い口蓋 Palate, Narrow#
定義口蓋の広さが 2 SD 未満(客観的)。または口蓋の幅が明らかに減少しているもの(主観的)
コメント口蓋の幅は,両側の上顎の第一永久歯間の距離で,舌頸部線において,特別な器具を用いて計測する。通常の臨床診療においては口蓋の幅は,主観的(測定によらずに)に評価される。狭口蓋はしばしば,高口蓋(High palate)に併存するが,両者は別々に評価すべきである。歯肉肥厚(Gingival overgrowth)があると口蓋が狭くみえるが,両者は異なる所見として評価すべきである。 ゴシック口蓋(gothic palate)とは口蓋の天井が丸くなく,逆 V 字型を呈し,口蓋の上部のみ狭い状態を指す用語である。
粘膜下裂口蓋 Palate, Submucous Cleft#
定義粘膜の異常はないが,下記 3 条件のうち 2 条件を満たすとき,軟口蓋に異常があると判断する。 ①硬口蓋の後縁のV字型の切れ目, ②二分口蓋垂,③軟口蓋の正中透明帯または溝につながる筋性離開(客観的)(図 41)。
コメント硬口蓋の後縁の V 字型の切れ目は時に触診可能[ Aase, 1990]。粘膜下口蓋裂はバンドリング用語であるが,ここでも用いられているように,よく使用される。
目立つ歯槽堤 Palatine Ridges, Prominent#
定義上顎の歯肉縁の口蓋側の軟部組織のひだの数/大きさの増加(図 42)。
コメント軟部組織のひだは典型的には,口蓋の外側,とくに前方に位置する。
同義語突出した外側の口蓋ひだ(Prominent lateral palatal ridges;Prominent palatine folds)
融合歯 Teeth, Fused#
コメント融合歯または 2 つの歯(別々の歯根をもつ歯の結合)は双生(ひとつの歯胚が不完全に分裂)とは, X 線写真によってのみ区別される[Cameron と Widmer, 2003]。このためここで本用語の定義をしない。
歯間空隙の拡大 Teeth, Widely Spaced#
定義同じ歯弓で殆どの歯間空隙(離開)が拡大すること(主観的)(図 43)。
コメント異常に大きな歯列弓や,矮小歯,乳歯・永久歯の混在によって二次的に歯間が広がることがありうる。乳歯の小さな間隙は正常範囲内であり,この形態を評価するには,経験が必要である。この用語は離開(Diastema)とは区別して用いる。
同義語多数歯間の歯隙の拡大(Multiple dia-stemata)
二裂舌(分裂舌) Tongue, Bifid#
定義正中に彎入したまたは分岐した舌(客観的)(図 44)。
コメント分裂舌は,舌癒着(Ankyloglossia)と関連していることがあるが,両者は個別に評価されるべきである。舌先のわずかな彎入は,分裂舌とすべきではない。
溝状舌 Tongue, Furrowed#
定義舌の背側に溝が集中していること(主観的)(図 45)。
コメント通常,小さな放射状の溝を伴う正中溝がある。この深い溝は外側縁にむかって広がっていく。規則的または不規則な地図状模様を呈する。溝状の舌は成人の 10~25%に認められるが,小児ではまれである。 同意語 突出した溝状舌(Prominent tongue grooves)
過去に使われたが言い換えが望ましい用語襟巻き状舌(scrotal tongue;軽蔑語)
巨舌 Tongue, Large#
コメント正常値はない。大きな場合,通常,舌は突出している。バンドリング用語であるが,しばしば用いられており,舌の三次元の各方向の大きさの評価が必要になることはほとんどないため,正式な用語として認めることとする。 小顎症(Micrognathia)の場合,誤って舌が大きくみえるような印象を与えることがある。
同義語Macroglossia,舌の過形成(hyperplasia of the tongue),舌の肥大(hypertrophy of the tongue)
分葉舌 Tongue, Lobulated#
定義舌の側面ないし正面に認められる多数の彎入や不規則な突出(主観的)(図 47)。
コメント分葉した舌は,二葉,三葉,または多葉に分かれる場合がある。
舌挺出 Tongue, Protruding#
定義安静時に,歯肉縁ないし歯よりも前方に突出した舌(主観的)(図 48)。
コメント舌挺出は巨舌(Large tongue)を伴う場合も伴わない場合もある。両者は異なる所見であり,個別に記載されるべきである。
小舌 Tongue, Small#
コメント正常値はない。きわめて小さい舌に対して無舌症(aglossia)という呼称がしばしば用いられるが,どんなに小さくとも舌組織が存在することがほとんどで,厳密な意味においての無舌症はきわめてまれである。バンドリング用語であるが,しばしば用いられており,舌の三次元の各方向の大きさの評価が必要になることはほとんどないため,正式な用語として認めることとする。
同義語小舌症(Microglossia),舌低形成症
過去に使われたが言い換えが望ましい用語無舌症(Aglossia),舌の低形成(hypoplastic/hypotrophic tongue)
平滑舌 Tongue, Smooth#
コメント本所見は糸状乳頭の数や大きさの減少を反映している。舌の全域ではなく局所的に平滑な場合に地図状舌(geographic tongue)という用語が用いられる。
魔歯 Tooth, Natal#
定義出生時から萌出している歯(客観的)(図 51)。
コメント歯根*胞とは混同してはならない。魔歯は上顎中切歯よりも下顎の乳中切歯に起きることが多く,第一大臼歯ではまれである。魔歯は 1/3,000 の頻度で生じ,北米インディアンの一部に多くみられる[Mok と Suina, 1986]。
乳歯早期喪失 Tooth, Premature Loss#
復元した項目
コメントKleigman ら(2007),Gorlin ら(2001)の正常域を参照のこと。乳歯の脱落の正常域は各歯の萌出平均時期より, 1年弱程度先行する。
過剰歯 Tooth, Supernumerary#
コメント上顎正中切歯の間に正中歯(過剰歯)を認めることが最も多い。萌出障害をきたし,前部に広い隙間を生じるが,従来の診察では,検出は難しく,X 線撮影により診断する。この呼称は乳歯の脱落遅延により,乳歯と永久歯が混在する状態には用いない。
口蓋垂欠損 Uvula, Absent#
コメントしばしば,軟口蓋裂(Submucous cleft palate)を伴うが,別に記載すべきである。
幅広の口蓋垂 Uvula, Broad#
コメントしばしば軟口蓋裂(Submucous cleft palate)を伴うが,別に記載すべきである。二分された口蓋垂の不完全癒合として縦走する溝は,広い口蓋垂,または不全型の口蓋垂裂とも呼称される。
口蓋垂裂 Uvula, Cleft#
定義多くは先端が二分している口蓋垂(客観的)(図 55)。
コメント粘膜下口蓋裂(Submucous cleft pal-ate)とは,別の用語である。
長い口蓋垂 Uvula, Long#
コメント臨床の場においては,口蓋垂の大きさを測ることは容易ではなく,またその大きさは軟口蓋や舌の基部や頭の位置により依存する。このため,口蓋垂の長さに異常があるかどうかの判断は観察者の経験にもとづくことになる。
狭い口蓋垂 Uvula, Narrow#
短い口蓋垂 Uvula, Short#
コメント口蓋垂の客観的測定は,側方頭部 X 線規格写真(セファログラム)により決定される。しかし,本特集では,身体的特徴の評価に X 線写真を用いないことと決めている。臨床の場においては,口蓋垂の大きさを図ることは容易ではなく,また,その大きさは軟口蓋や舌の基部や頭の位置により依存する。このため,口蓋垂の長さに異常があるかどうかの判断は観察者の経験にもとづくことになる。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語口蓋垂低形成(Hypoplastic uvula)
本アトラスは,American Journal of Medical Genetics
2009年第1号「Elements of Morphology: Standard Terminology」の日本語訳です。
翻訳内容は雑誌「小児内科」42巻8号(東京医学社)に発表されたもので,
東京医学社のご快諾のもと掲載しています。